我々が興味深いと思うMariaDBの機能を紹介するシリーズ、最初の記事では、バイナリログイベントのレプリケーションを選択的にスキップする機能を取り上げる。この機能は、MariaDB 5.5と10から使用可能だ。
MySQLの一般的なレプリケーションをする時、デフォルトでは、全てのイベントがバイナリログに書き込まれ、そのバイナリログのイベントは、全てのスレーブに複製されてしまう(スキーマ単位でフィルタすることも可能)。しかしこの機能を使えば、バイナリログに書かれてしまっても、特定のイベントをスレーブに複製しないようにすることが可能だ。こういったイベントについてもバイナリログに書いておけば、ポイントインタイムリカバリの際には有用になる。
従来は、あるイベントをレプリケーションしたくない時は、sql_log_bin=0を設定することで、そのイベントを読み飛ばすことができた。この場合、イベントはバイナリログにも書かれないし、スレーブにも複製されない。
しかしここで紹介する新機能を使えば、セッション変数を設定してイベントにタグ付けしてやれば、バイナリログには書き込み、一方で特定のスレーブには複製しないということが可能になる。
これをやるのは非常に簡単で、マスタで以下のように実行すればよい。
set skip_replication=1;
スレーブで、 replicate_events_marked_for_skip='FILTER_ON_MASTER' あるいは replicate_events_marked_for_skip='FILTER_ON_SLAVE' が設定されていれば、マスタで実行されたイベントはスキップされて、複製されなくなる。
replicate_events_marked_for_skipの取りうる値は以下の通り。
- REPLICATE (default) : スキップされたイベントもレプリケーションされる。
- FILTER_ON_SLAVE : スキップとマークされたイベントはスレーブでもスキップされ、レプリケーションされない。
- FILTER_ON_MASTER : マスタ側でフィルタリングが行われ、スレーブには転送もされない。ネットワーク帯域を節約できる。
これは素晴らしい機能だ。どんな時に特に役立つだろうか？
ユースケース
アーカイブ用途のシステムでは、非常に面白いことになる。多くの人はデータをアーカイブする時には、pt-archiverのような、アーカイブサーバにデータをコピーし、元のサーバからデータを削除するツールを使うだろう。
ここで紹介している機能を使うと、削除するデータをコピーしておくアーカイブサーバを用意する代わりに、消したくないデータを保持しておくスレーブを作ることができる。この方が手間が少なく(賢く？)、アーカイブサーバを常に最新に保つこともできる。もちろん、この場合はsql_log_bin=0を使うこともできる(ポイントインタイムリカバリを考慮しないなら)。
Galera Clusterの場合はどうだろう？そう、この機能が素晴らしいのはここだ。Galera Clusterのノードでsql_log_bin=0を実行してしまうと、全てのノードでdeleteが無視されてしまう。その結果、ノード間でデータの不整合が起きてしまうのだ。
従って、Galera Clusterでアーカイブサーバとして非同期スレーブを使っているなら、この機能は絶対必要なものになる。
下の図のように、Percona XtraDB ClusterにMariaDB Galera Clusterノードを組み込み、pt-archiverで過去のデータを削除することもできる。
この場合、pt-archiverは、--set-vars "skip_replication=1"を設定して起動する。
