オブジェクト指向プログラミングに関するいい説明にはなかなか出会えていませんでした。正式なエンジニアリングの教育を受けたわけではないけれど、いつも技術やデザイン、芸術といったやることすべてに明確なアイディアを持って説明する、ある人の言うことを聞くまでは。
ここに挙げるのは1994年の「ローリングストーン」のインタビューの引用で、スティーブ・ジョブスがオブジェクト指向プログラミングとは何かを説明しているものです。
Jeff Goodell : そもそもオブジェクト指向ソフトウェアとは何か、簡単な用語で説明していただけますか?
Steve Jobs : オブジェクトとは人間のようなものだ。生きていて、何をどうすべきかという知識を自分の中に取り込み、物事を覚えていられるようにメモリーを持っている。非常に低いレベルの抽象度で彼らとやりとりをするというよりは、僕たちが今ここで話しているように、非常に高い抽象性を持って交流するものだ。
例えばこんなことだ。もし僕が君の洗濯屋(laundry)オブジェクトだとすると、君は僕に汚れ物を渡し、「服を洗濯してくれ」とメッセージを送ることができる。たまたまサンフランシスコで一番いいクリーニング屋がどこかを僕は知っている。僕は英語をしゃべり、ポケットにはお金も入っている。僕はタクシーを拾い、運転手にサンフランシスコのその場所へ行ってくれと伝える。服が洗濯されたらタクシーに飛び乗り、ここに戻って来る。きれいになった服を君に渡して「こちらが洗濯済みの服です」と僕は言う。どうやって僕が洗濯したかは君はわからない。クリーニング屋の場所もわからない。もしかしたら君はフランス語しかしゃべれなくて、タクシーを捕まえることもできないかもしれない。ポケットにはドルが入ってなくて代金を払えないかもしれない。一方で僕はやり方を全部知っている。君はそのやり方を知る必要はないんだ。すべての複雑なことは僕の中に隠されていて、僕たちは非常に高い抽象度でやりとりができる。これがオブジェクトが何かということだ。複雑さをカプセル化し、その複雑な部分とのインターフェースは高レベルなものなんだ。